| 男の名は、パオロ・パリーズィ。彼は、もともとジェノバ生まれの都会っ子でしたが、いわゆる脱サラして自然放牧による牧畜業に転向しました。 |
| ある日、イタリア原産種の豚チンタネーゼに出会って一目ぼれ。わずか三頭から、飼育を始めたのです。それはほかの生産者に、クレイジーといわれるほどの暴挙でした。というのも、チンタネーゼは、小型で成長が遅く充分な運動をさせないと肉質が著しく劣るという、じつに厄介な豚。このため生産者から敬遠され、いまや絶滅寸前という代物だったのです。 |
| ここから、パオロの不撓不屈 の挑戦が始まりました。彼の飼育法は、徹底してよい環境を与えること。豚は、広々と清潔な豚舎で眠り、夜明けとともに、雑木林や池が点在するのどかな丘に放牧されます。ここで、大好きな水浴びをしたり、草やきの根、団栗、松の実などを探して自由に食べる、文字どおりの楽園生活。妊娠も出産も自然にまかせるので、出産時に圧死してしまう仔豚もいるとのこと。 |
| こうして自然洵汰され、生命力の強い健康な仔豚だけが生き残り、さらに三年数カ月という時間をかけてゆっくり育てられます。加工の過程でも、経験豊かな選りすぐりの職人が“パオロ仕様”に忠実に従って、腕を奮うのです。 |
| パオロがいちばん重要と見なす塩は“ブルターニュのホワイトゴールド”と称されるゲランドの自然塩を採用。熟成期間も、通常のプルシュートが四百日前後であるのに対し、パオロのプロシュートは六百三十日にも及ぶとか。始めは十三キロほどあった枝肉が、最終的には七〜九キロになてしまうというから驚きます。 |