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■三留商店コラム〜店主執筆“四季の味”連作コラム等、美味しい食材のワンポイント
オリーブの国の黒鮪
ゲッツイ社のサンジョラーロ・トンロロッソ/赤身
ゲッツイ社のサンジョラーロ・ヴェントレス/大とろ

 日本人は、世界に名だたる鮪好きです。鮪のなかでも、極上品とされるのが天然の黒鮪。赤身やトロの刺身の美味しさはいうまでもないでしょう。漁獲量が激減している昨今、まさに泳ぐ宝石とも呼べる貴重な魚です。
 今回ご紹介するシチリアは「ゲッツイ社」のサンジョラーロは、なんとこの天然黒鮪をオリーブに漬けた贅沢なもの。鮪好きは、なにも日本人の専売特許ではありません。じつは、世界中で魚の加工保存食として最もよく食べられているのは鮪なのです。
 イタリアでは、ソテーにするのが一般的食べ方ですが、“トンノ”と呼ばれる缶詰や瓶詰も食卓に欠かせません。パスタの具や前菜などいろいろな料理に使われ、ペースト状にしたツナソースを仔牛肉にかけるのは、イタリアのマンマの定番料理です。
地中海地方では、中世の頃から鮪を保存食として利用しており、すべての部位を加工できる黒鮪は当時から貴重品でした。
赤身やトロばかりでなく、血合いや血合いぎし、白子までをオイル漬けにし、赤身トロの中間部位はブレザオラ(塩漬乾燥ハム)に、卵はボッタルガ(からすみ)に、そして中落ちは塩と胡椒で調味してさサラミ(腸詰)にします。
ちなみに、からすみのルーツは地中海沿岸にあり、日本へはシルクロードを経て伝わったとか。
 黒鮪は五〜六月の産卵期、北大西洋かジブラルタル海峡を通り、シチリア西部の暖かい浅瀬、ファヴィニャーナ沿岸に回遊してきます.まるで音楽のような響きを持つこの地方が、初夏になると伝統的な鮪網“トンナーラ”の漁で沸き返るのです。五月に始まる漁は四十五日間ほど続きます。水揚げされた鮪を加工するのは、中世以来の技術を受け継ぐ職人“マエストロ”。
No.35/冬号
「ゲッツイ社」の作業場は、ファヴィニャーナ沿岸の港町トラーパニ郊外にあります。ここで働くのは、選りすぐりのマエストロばかり。短時間で鮪を加工する熟練の技によって、鮪は本来の旨味を十二分に引き出され、ごく上質の保存食へと生まれ変わるのです。
 写真は、トンノロッソ(赤身)ヴェントレスカ(大トロ)をオイル漬けにした二種。口の中でとろけるような軟らかさに驚かれること、請け合いです。鮪は刺身に限るという我々の認識を一変させるこの逸品。是非ともお試しになってみてはいかがでしょうか。
ケイパーを添えてクラッカーと食べてもよし、グリーンマスタードともとてもよく合います。 
 ところで地中海でも鮪の漁獲量は減少しているそうです。トンナーラを仕掛けている漁場はわずか数カ所を残すのみ。それにもかかわらず、上質黒鮪が獲らるファヴィニャーナを日本人が放っておくはずがなく、この貴重な漁獲高の60パーセントもが刺身用に日本へ輸出されているとのこと。和食の影響で鮪をカルパッチョ風に出す店が増えたというのも、日本の食文化の影響を物語ります。
(三留商店主人)
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