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類い希なる自家製チーズ
ポデーレ・イル・カサーレのペコリーニノ

 ペコリーノは、羊のミルクから作られる、イタリアでもっとも古い歴史を持つチーズ。羊を指すイタリア語のペコラが、その名のゆえんです。
日本に輸入されるものは、ラッツィオ州のペコリーノ・ロマーノが主流ですが、あちらで一番評価が高いのは、トスカーナ州ピエンサ産のペコリーノ・トスカーナ。なかでも、ここにご紹介するポデーレ・イル・カサーレ農場のそれは、他の追随を許さない至高のチーズといえるでしょう。
 このポデーレ・イル・カサーレ農場では、無農薬栽培で小麦を育てて、パスタに加工する一方、羊や山羊を放牧して、ミルクからチーズまでを一貫して製造しています。農場のオーナーは、、スイス人のウリッセ氏。その経歴がちょっと変わっています。
 彼は、スイスのチューリッヒでレコード会社を仲間とともに経営し、そのかたわらベーシストとしても活躍していましたが、トスカーナの美しい自然に見せられて、15年前に移住。おりしも盛んになっていたスローフード思想にのっとって、一昔前のような自給自足の農園生活を始めました。 
 以来、手間暇かけてよい製品を作ることをモットーに掲げ、伝統的な手法を重んじていますが、その徹底ぶりが並大抵ではありません。たとえば、パスタを作るに際には、水車を動力とした300年以上も使われている石臼で小麦を挽き、製麺はナイフで手切り。さらに、薪を焚いて50時間もかけて低温乾燥させるといった具合です。
 チーズ作りもしかりで、誰の手も借りずに、彼1人でなされます。農薬とはいっさい無縁の、自生の草や実を食んで育った羊の乳を搾り、昔ながらのやり方で熟成させるのだとか。こうしてできるペコリーノは、特有の強い匂いがあって、なんとも肌理が細かく、一般のペコリーノにくらべて、さわやかでやさしい味わいに仕上がっています。
 このペコリーノは、生産量がきわめて少ないため、市場にはほとんど出回りません。今回、日本に入ってきたのが不思議なくらい、稀少価値があるといって過言ではないでしょう。
No.44/春号
 幸運にも輸入されましたのは、2年近く熟成室に寝かされた、プレーンタイプのペコリーノ・リゼルヴァと、胡桃の葉で覆って熟成させた、ペコリーノ・ジョナートの2種類です。
 カットしてそのまま食べるのはもちろん、摺りおろしてリゾットやパスタなどに加えても。ミネストローネをはじめ、トマト料理にもよく合います。
また、イタリアでは薄く切り分けて、蜂蜜を塗って食べるのだとか。さっそく試してみましたが、これがまさに絶妙でした。ぜひ一度お試しいただきたいものです。
(三留商店主人)
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